山形線には福島と山形の県境にある奥羽山脈(吾妻連峰)を超える板谷峠があり、急勾配を伴う山越えのためかつては交通の難所として知られていた。現在は新幹線や在来線719系がさらっと走り抜けてしまうが、国鉄時代にはこの難所を4つの駅で連続したスイッチバックを行うことによって山越えをしていた。
スイッチバックが行われていたのは、赤岩駅・板谷駅・峠駅・大沢駅の4駅。現代に残るスイッチバックは折り返しのものばかりだが、これは駅に停車するためのもの。山登りをした列車は、本線から反れた側線にある水平な駅に停車、バックして別の側線に入って折り返して加速、再び本線に戻って山登りという方法で山越え・駅停車が行われていた。
この板谷峠でのスイッチバックは新幹線の開業・改軌工事とともに終了してしまったが、遺構はそのままに在来線が停車する駅として利用され続けている(赤岩駅は2021年に廃止されたため利用不可)。一般的な駅とは異なった施設や駅の歴史、停車する在来線の本数の少なさから秘境駅として知られており、鉄オタにはよく知られたスポットとなっている。
中でも有名なのが峠駅。今では珍しくなった駅立ち売りが継続されているためだ。峠の力餅については後日綴ってみることにして、この記事では峠駅の訪問記のみに注力したい。
さて今回は鉄オタなら鉄路で向かう峠駅に、敢えて車で向かってみた。
ナビにはない道なき道を敢えてMT車で攻め込んでみたが、お勧めはしません笑。板谷駅手前で入った細く急な一本道を上り下りして約20分、ようやく峠駅に到着した。
峠駅付近。ここだけ少し開けているといった感じ。写真右側に峠の力餅を製造する「峠の茶屋 力餅」のお店がある。
峠駅入り口。
昔使われていたであろう信号機が立ったままになっている。見てわかるようにここは昔線路が伸びていた場所だ。
反対側には架線柱が残ったまま。一目見て鉄道が走っていた跡だとわかる。この先に旧峠駅があり、山登りした列車はそのホームに停車していた。
さて、駅の中に入ってみよう。
板谷峠のスイッチバックはシェルター付き。これは北海道などではよく見られる設備で、ポイントを雪から守るなどの役割がある。山の中ということもあってか夏場のシェルター内は比較的涼しかった。
傍らには昔使っていたであろうポイントがそのまま置かれていた。
ホームが見えてきた。
JR東日本では比較的珍しい(気がする)構内踏切。これを渡ってホームへ。
見た目ちょっと寂れているが、踏切は現役できちんと稼働する。
切符回収用のポストはあるが、券売機のようなものはない。
ホーム。1面2線の島式ホームで、待合室も用意されている。
列車の本数は大変少ないし、平日の昼間にしかも車で来る人なんていないため、ホームには自分1人だけ。まさに秘境駅。
列車が来るとき以外は静まり返っていて、風や木々、鳥の鳴き声が聞こえる程度。鍾乳洞や隧道など、トンネルで良くあるような冷涼な空気が流れ、砂利の臭いが感じられた。
1時間に1本以上が運転されている山形新幹線の車両が通過していく。福島と米沢の中間あたりに位置しているため、下り列車が来れば上り列車もそろそろ通過する、といった感じで新幹線がやってくる。
右が線路(米沢・新庄方面)、左が駅通路になっている。左がかつての峠駅へ続く路線、右が本線だ。
碓氷峠に続く急勾配路線であり、ダイヤ上その点が問題に上がることもしばしば。トンネル貫通案が前々からあるも進展しているとは言えない。
峠駅にやってくる719系5000番台。標準軌であるからか、今でも719系がモーターをうならせて山越えを行っている。
列車の発車を見届けてから、力餅を購入して酷道を下山。峠駅に続く県道は232号線は冬季は閉鎖されているようで、また次の夏にでも再訪したいと思う。
ちなみに短時間で峠駅を楽しみたい場合は、13時20分着の米沢行きでやって来て、13時26分の福島行きで戻るのがオススメ。往復列車で来られるし、力餅販売も見られる。実際、訪問した時にはこの行程で訪問している18きっぱーが多く見られた。つまりこの時間、力餅買うなら予約電話が必須。雰囲気を味わうにはこれで十分だと思います。長居しての周辺探検も楽しかったけど。
今回はこの辺で。
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