抜海駅は、北海道稚内市にあるJR宗谷本線の無人駅だ。1924年に開業、旭川から鉄路で約250km、稚内駅からは2駅だが直線距離で10kmちょっと離れたところに位置している。
その変わった駅名は、アイヌ語に由来しているもの。駅周辺の地名も抜海といい、近くにある"子を背負うように見える岩"を意味するアイヌ語から来ているそう。
電車は普通列車のみが停車、2022年現在では上下線で計7本の列車が発着する。駅利用者は非常に少ない。
2019年、JR北海道は抜海駅は廃止予定の駅の1つと発表した。とりあえずは自治体が駅の管理を担うことになり存続しているが、そう長くは続かないと言われている。
2023年度までは維持管理を存続すると発表があったが、それ以降はバスなどへの転換が濃厚だ。代替案、そして近隣住民との議論に決着が付くまで、という前提の元の存続であるため、役目を終える日が近いと言える。2024年に開業100周年を迎えるのだが...それまで持つだろうか。
さて、ここから本題へ。
そんな抜海駅に今回は車で訪問してきた。まずは駅舎から見学していく。
抜海駅舎は、1940年に建てられた木造駅舎。「日本最北端の木造駅舎」である。誰のものかわからない自転車のおかげか、見た目は一般的な民家のよう(笑。
この辺りは雪や寒さが厳しい上に、高い木々や建物がないために海風の影響を直に受けやすい。節々でその自然の厳しさを物語っているように感じられ、補修されながら使用されていることが窺えた。
駅名板は手書きだろうか、年季が随分と年季が入っていて趣がある。
駅舎の中へ入る。
扉を入ると、もう1枚扉があり、その先が待合室。2枚構造で風や寒さを和らげる仕組みで、この空間は風除室と呼ばれる。駅ホーム側も同じような構造だ。
2枚目の扉をくぐって待合室へ。券売機や窓口はなく、その痕跡だけうっすら残っていた。
抜海駅は1984年に無人駅化されて以来、40年近く無人駅として存在している。目新しい改造跡は見当たらなかったので、有人時代からあまり大きな変化はないと捉えて良いのかも?
待合室の角には訪問記念ノートや応援グッズが置かれていた。グッズは過去の写真や有志が制作したものなど。
ノートには記入者の到達した日時や出発地、住まいの都道府県、目標などがひとことコメントで綴られていた。
抜海駅はその変わった名前とほぼ日本最北端の地と言える(最北端に近い)ことから、北を目指す旅人の目標地点として名前が知られている。ここを目標にして来た、バイクで日本一周で立ち寄ったなどなど。ノートにはそういったコメントが溢れていた。
片隅には駅時刻表、電話など鉄道駅としての設備が。SLが走っていた時の写真なども飾られていた。
待合室を出てホーム側の風除室へ。
誰もいないからか、木の扉のガラガラという音が大きく聞こえ、歩くたびに床もギシギシと唸る。昔ながらの木造家屋と言った雰囲気。
ホームへやって来た。駅舎を出ると、下り稚内方面ホームである。
ホームは対面式の2面2線。向かい側の上りホームへは、駅南側にある構内踏切で行き来する構造。
写真左手奥には、かつては貨物の引き込み線があった。1977年まで貨物取扱が行われていたが、すでに線路が撤去されてなんとなく跡がわかる程度らしい。最も、草木の生い茂りで確認できる状態ではなかったので真偽は不明(笑。
ちなみに、北のSLの拠点だった稚内機関区の廃止が1975年、名寄以北の貨物取扱廃止が1984年、音威子府~南稚内の天北線廃止は1989年。北の路線は50年前から年々衰退が進んでいると言えるのかもしれない。
構内踏切は遮断機がないタイプのもの。列車接近時は踏切の音だけが鳴る仕組み。
上りホームから、下り線ホームと駅舎を見る。
くたびれていながらも重々しく風格と趣が感じられる。
駅名板。
名所案内はJR北海道の至るところで目にしますね。ナンバリングされているのが唯一近代的っぽいポイントかも(笑。
線形を見てみる。
抜海駅は、一線スルー方式ではなくY字ポイントで入線・出線する形を取っている。線路は上下線で別れているけど、現行ダイヤではこの駅での列車交換は設定されていない。
最後に駅ホーム側の駅名板を。キレイなので割と新しいものかもしれない。これを撮って撤収。
こんな感じで見学は終わり。帰り際、1人の旅人と遭遇しただけで他には誰ともすれ違わなかった。虫の声がよく聞こえ、とても閑散としていた。
駅の周囲には目立ったものがなく、牧草地にポツンと建っている抜海駅。
廃止後も駅舎は存続する意向だそうだけど、老朽化が進む木造建築であり観光地として大きくないことから、10年後は残っていないだろうと推測。現役の時に訪問出来て良かった。また機会があれば来たいけど...もうないかな...。
最後に...
大雨と地震により、不通区間が発生するなど被害が大きかった宗谷本線。先日通過したばかりの場所が災害となると思うところがある。
線路は復旧したとのことで何よりだが、その地域にお住まいの方々は今後もくれぐれもお気をつけて。謹んでお見舞い申し上げます。
訪問:2022年8月
今回はこの辺で。
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